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梨、棗なつめ、黍きみに粟つぎ、延ふ葛くずの、
   後
のちも逢はむと、葵あふひ花咲く       万葉集 作者不詳


真金吹く 吉備の中山 帯にせる
   細谷川の 音のさやけさ         
古今集 神遊びの歌
「真金(まがね)吹く」は枕詞、金属を溶解し、精錬するという、古代における最先端の技術をあらわした褒め言葉なのです。



いやな風 穂のない黍のに よきによきと  一茶 
「七番日記」


黍の中 嚔飛ばして 誰か来る       道彦 
「蔦本集」


黍からや 鶏あそぶ 土間の隅
  字品まで飄亭に送られて
黍小黍 一里半来て 別れ哉
黍動く 野分の里に 灯のともる          正岡子規
      






  吉備国と桃太郎伝説
 色々な説がある様ですが、五穀の一つキビが多くとれた土地だから、吉備という名前になったというのが、一番素直な説です。吉備国は現在の岡山県を中心に兵庫県の西側、広島県の東側を含む、古代の一大勢力でした。統一王朝が整備される中、豪族の分割政策により備前、備中、備後、美作に分割されます。
 桃太郎伝説は百済の渡来人(ワラ)との間の勢力争いがそのルーツです。勝った吉備族ということです。ワラの一族は最新の鉄の製造技術を持っていた一族で、その技術が吉備国を象徴することになり、枕詞になるのです。
 平安時代の医学書、医心方には、桃は果物というより万能薬と評価されています。ワラ族討伐は、「当時恐れられた伝染病(鬼)を万能薬(桃)と十分な食料(キビ)で克服する。」という願いが重ねられ、桃太郎伝説が生まれたのでしょう。









  き    び   ( こきび, きみ )    〔 い ね 〕
Panicum miliaceum L.
 上古時代に渡来して、今は広く畠に栽培されている一年生の穀類草本でインドの原産である。茎は直立し緑色の円柱形で、高さ1m以上になり、やや粗大で節がある。葉は互生して長い広線形、先は次第に細まって尖り、幅は13mm位、粗毛が散生して、下部は長い軸となって開出した長い毛が密にはえている。 秋、茎の頂、ときには上方の葉腋から、無数の花を持つ花穂を抽出して多くの枝を分かち、小分枝の先端に1個ずっの小穂をつけ、みのると傾垂する。小穂は長さ4、5mm位、卵形で先端が尖り第1包頴はやや小形、第2、第3の包頴は同形で洋紙質である。その内部の護頴と内穎は相抱いて額果をつつみ、ほぽ球形で、通常、淡黄色で「アワ」に比べるとより大きい。ウルチキビ、一名ウルキビ、モチキビ、ア力キビ、クロキビ等の品種がある。
〔日本名〕キビは、古名キミが変つたもので、キミは黄実の意味である。小キビはモロコシキビにくらぺると小さいからいう。
-牧野植物図鑑-








  収穫の秋なので、五穀を取り上げようと思った。キビより稗や粟の方が古代では重要だったが、桃太郎伝説のキビを忘れては通れないので、キビにした。
 桃太郎伝説は疱瘡などの伝染病がモチーフと思っていたが、百済の王族一族との吉備の国の覇権闘争であったことことが調べてわかった。桃太郎達が持ち帰った財宝は、当時の最新、鉄の精錬などの朝鮮半島由来の品々や技術であったのです。酒呑童子の話と比べると鬼の悪行が明確じゃないのは、覇権の争いだからです。桃太郎に正義があったというのは怪しい。最新グッツ欲しさに少数派の一族を滅ぼしたと言われても仕方ない。   (ま)





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