↑prev next↓
        春  の  雨

靴下も履かず、防寒具も着ずに歩けるほどに、暖かくなった。
しとしと降る雨は、天が与えた慈愛の雫。

山菜を採りに車を降り、多摩川の支流に向かった。
水面には無数の同心円の波が広がっていた。
対岸では白鷺が、水面にすっと立ち、動かず魚を狙っている。

ああ、なんと素敵な雨だろう。
花起こし、芽起こし、春起こしのの雨。
そして、人々の心の傷を癒す雨。

傘を捨て、等間隔に並ぶ飛び石に乗り、
無数の同心円の小さな波を眺めているだけで、
僕も大きな優しさに包まれていることが、分かった。

2015.3.19 Mamoru Muto
↑prev next↓