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今回は橘、古代はミカン類全般を指していましたので、古代のミカンについての含蓄です。



橘は 実さえ花さえ その葉さえ
     枝に霜降れど いや常葉の樹       聖武天皇


橘の 花散る里の ほととぎす
     片恋しつつ 鳴く日しそ多き       大伴旅人


橘の 蔭かげふむ路みちの 八またやちまたに
     物をぞ思ふ 妹に 逢はずして   三方沙彌
みかたのさみ


つのさはふ、磐余いはれの道を、朝さらず、行きけむ人の、思ひつつ、
通ひけまくは、霍公鳥、鳴く五月には、あやめぐさ、花橘
はなたちばなを、
玉に貫
き、かづらにせむと、九月の、しぐれの時は、黄葉を、
折りかざさむと、延
ふ葛の、いや遠とほ長く、万代よろずよに、
絶えじと思ひて、通ひけむ、君をば明日ゆ、外にかも見む
山前王やまさきのおほき




ミ カ ン










橘の別名  「非時香菓」
(ときじくのかくのこのみ。非時の香の木の実とも表現される)

 垂仁(すいじん)天皇が、田道間守(たじまもり。多遅摩毛理の字で書かれることもある)に”常に良い香りを放つといわれる、不思議な実”を探しに行かせた故事による。( 古事記 )




た ち ば な










ひな祭りのひな壇には、

「左近の桜(さこんのさくら)」に対して

「右近の橘(うこんのたちばな)」がある。




ダ イ ダ イ










橘     紋
( 葛城王と弟の佐為王に発する、古代の橘姓の代表的家紋。)



菊座橘


井桁の内橘


頭合せ三つ橘















きしゅうみかん     (こみかん, たちばな)        〔みかん科〕
Citrus deliciosa Tenore
 一番古くから暖い地方に栽培されている常緑高木。幹は大きくなり長い年月を経たものも少くない。技葉は密に茂り、高さ5m内外に達する。枝は細長く、葉は互生し、小形で長さ5~7cm位、卵状皮針形あるいは長卵形、全縁または細かい波状のきょ歯がある。葉柄には小さい翼があり、他のミカン類と同じく上端には節があり、葉身とこの節の部分で関節する。6月頃、かおりのある白色の花を開く。5個のがく片は小形で宿存する。花弁は5個、雄しぺは20本内外。黄赤色でやや平らな球形の液果を結ぶ。直径は3~4cm位、外果皮は離れ易く、その表面は平滑で光沢がある。中軸は中空。種子は小形で尖る。変種が多い。食用にされる程おいしい味をもっているが、現在ではウンシュウミカンに圧倒されてほとんどかえり見られない。しかし本種はずっと長い間人々に愛用されたミカンであることは想像できる。多分これは昔のタチバナの系統を引いたものであろう。
-牧野植物図鑑-




か ら た ち










 今回は橘、花の季節ではなく実の季節として、古代の橘についての含蓄です。古代の橘は柑橘類の総称、主に小ミカン、日本橘です。日本橘は日本の野生種ですが、酸味が強く、食用にはむかない。中国から入ったコミカンの方が古代の橘にふさわしいという牧野博士の意見で「きしゅうみかん」の方を載せました。田道間守が見付けてきた橘が小ミカン何かも知れないがそれは分からない。非時香菓として重宝されたのは確かです。源平藤橘の古代の四大家系の一つに数えられたが、子孫は繁栄しなかった。
 また、紀伊国屋文左衛門が江戸に運んだのは紀州小ミカンで、大粒の温州ミカンではない。                           (ま)


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