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打ち麻を 麻続をのみの王 海人なれや
   伊良虞
いらごの島の 玉藻刈ります   作者:不明  万葉集


潮干なば、玉藻刈りつめ、家の妹が、
    浜づと乞
はば、何を示さむ       山部赤人  万葉集


くしろ着く答志とふしの崎に今日もかも
    大宮人の 玉藻刈るらむ       柿本人麻呂  
万葉集


志賀の海女は、藻刈り塩焼き、暇いとまなみ、
 櫛笥
くしげの小櫛をぐし、取りも見なくに    石川君子  万葉集


風高く、辺へには吹けども、妹がため、
  袖さへ濡れて、刈れる玉藻ぞ   紀女郎
きのいらつめ  万葉集


鯨魚いさな取り、浜辺を清み、うち靡なびき、
生ふる玉藻に、朝なぎに、千重波
ちへなみ寄せ、
夕なぎに、五百重波
いほへなみ寄す、辺つ波の、
いやしくしくに、月に異
に、日に日に見とも、
今のみに、飽き足らめやも、白波の、
い咲き廻
めぐれる、住吉の浜
                    車持千年
くるまもちのちとせ
  万葉集



  



現 在 名   万 葉 時 代 の 名

あらめ  

   阿良米(あらめ)
あまのり   無良佐木乃利(むらさきのり)
ふのり   布乃利(ふのり)
てんぐさ   古留毛波(こるもは)
ほんだわら   莫告藻(なのりそ)
みる   海松(みる)
わかめ   和可米(わかめ)



  




わ か め   (う め の は)              〔こんぶ科〕
Undaria pinnatifida Suringar
 九州から北海道にいたる太平洋、日本海両沿岸に産する褐藻で干潮線下に生ずる。根は織維状、繰返し叉状に分岐する。葉は長さ60~100cm、幅は30~40 cm位あり、羽状に分裂し、毛叢及び粘液腺を全面に散布する。中肋は葉面よりも著しく厚く、ほぼ茎と同じ幅であるが先端附近では次第に細くなる。葉は軟かく、やや粘滑で褐色または暗褐色を呈する。子嚢群は茎の両縁に沿ってできる襞(ひだ)状の、俗にめかぶと称する成実葉の両面に生ずる。本種には大体南方産のものと北方のものとが古くから区別され、後者をナンブワカメ(f.distans Miyabe et Okam.) とよぶ。両形の相違点は茎はナンブワカメの方が長く、その上に成実葉が茎の下端の方からでき、また葉の切れ込みが深い。これに反し南方の形では茎が短かく、成実葉は一般に茎の上方に近く生ずる。古くから広く食用に供せられ製品としては鳴戸若布が最も有名である。
-牧野植物図鑑-



  



 今回は万葉集に「藻」の歌が多いので(80首以上)、「藻」にしました。食材としてばかりでなく、接着剤としてのふのりとか、生活用材としても貴重なものでした。玉藻は美称であり、海の豊かさを表す形容として多く使われています。また、藻塩は縄文時代から一部平安時代まで続く食品採取法です。海藻を乾燥させ燃やしその灰をとり、それを更に海水をに溶かし、うわ水を土器で沸騰乾燥させ塩を取るという方法です。塩田法が確立するまでが、唯一の食塩製造法でした。  (ま)

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