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初 夏  め ま い


朝飯を食べて眠ってしまったらしい。
倦怠感が全身を覆う。
窓と隙間からこぼれてくる光は明るく鋭い。
目眩が全身を覆ってきた。
身体はこの強烈な初夏の日差しを拒否しているらしい。


「ああ、面倒臭い、また寝ようか!」
「ダメダメ、そうしたら今日一日無駄にしてしまう。」
「とにかく家を出よう、ここに居ては、身体が眠ったままだ。」


日曜日だからか、連休明けで遊びに出かけるのにも疲れたか、
今日は車が少ない。
雲ひとつない、初夏の太陽は、
南フランスかスペインを思わせるほど、眩しく、
半袖から抜き出た腕の肌を焼く。
まだ湿気を伴わない、大陸育ちの空気が、それらを援護する。

内向きの人生をおくって来た為か、
こと季節の「めまい」の記憶が蘇る。
もう小学生の頃から、明るい光の中で戸惑う僕が、
ポツポツと思い出される。


「やっぱり正解!家を出て来て。」
街抜け、茶畑の続く田園地帯までやって来た。
もう強い倦怠感も収まった。
畑の隅に咲く初夏の花々も、所々に残る武蔵野の林の木漏れ日も、
美しく輝き、僕に笑顔をおくってくれるようになった。

2014.5.11 Mamoru Muto
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