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瓜食めば子ども思ほゆ、栗食めばまして偲はゆ、
  いづくより来りしものぞ、眼交
まなかひにもとなかかりて、
    安寐
やすいし寝さぬ                 山上憶良


松返り、しひてあれやは三栗みつぐりの、
    中上り来ぬ、麻呂といふ奴           柿本人麻呂歌集

意味: 鈍感な人でもないのでしょうに、京に行ったまま私の所 には来もしないで、麻呂という人は。まったく、もう。。。。




行く秋や 手をひろげたる 栗のいが      松尾芭蕉


栗拾ひ ねんねんころり 云いながら      小林一茶


逗留とうりゅうの 窓に落つるや 栗の花      向井去来


月夜見つきよみの 光を待ちて 帰りませ
  山路は栗の いがの多きに          良 寛





ク リ の花





 カチグリ(搗栗) / 日本では栗を干した後に搗ついて殻と渋皮を除去したカチグリ(搗栗)が利用されていた。カチグリは名前が「勝ち」につながるため武家の縁起物とされた。

 渋皮石鹸/ 渋皮は石鹸などに用いられる。

 桃栗三年、柿八年、(梨の馬鹿めが十八年、もしくはユズの馬鹿野郎十八年、梅はすいすい十六年)
  種を植えてから実を収穫できるまでの期間を指すことわざ.









く   り              〔ぶな科〕
Castanea crenata Sieb. et Zucc.(= C. pubinervis Schneid.)
  山地にはえ、また果樹として栽植される落葉高本。幹は直立し、枝や葉は繁り、大きいものは高さ17m、直径60cm余り。葉は有柄で互生し、長楕円形あるいは長楕円状皮針形、先は鋭尖形、基部はやや心臓形あるいは鈍形、左右が不同、ふちには先が針状にとがったきょ歯があり、上面は深緑色でなめらか、脈上に星状毛があり、裏面は淡色、小腺点があって脈上は有毛、枝先の葉にはしばしば網毛が密生して帯白色となり、側脈は多数できょ葉に向って羽状に斜に平行し明瞭である。若い葉には托葉がある。
  6月頃虫媒花を開く。雌雄同株。おばなの尾状花穂は新技の下部の葉腋につき直上し、長さ15cmぐらい、多数の黄白色の細花をつけ、あまい香がある。おばなはがくが6個に深裂しおしぺは10本ぐらいで長く外に出ている。めばなの集まりは無柄で、おすの花穂の下部につき、普通3個が集まって鱗片のある総包につつまれている。めばなのがくは6個に深く裂け、子房は下位で5~9の細かい線形の花柱がある。堅果は1~3が集って、とげのある総包すなわちいがに包まれ、熟すといがが4裂して、果実をあらわす。種子を食用とする。
  〔日本名〕クリは黒実すなわちクロミの意味。   〔漢名〕 栗は支那産の同属の別種、Castanea Bungeana Blume アマクリをさす。
-牧野植物図鑑-








  今回は栗です。食物シリーズというわけではありません。秋になると、栗ご飯を作りますが、なかなか意味深い組み合わせです。栗はクルミ、ドングリなど一緒で、縄文時代の主食です。お米を始め稗、粟、黍など穀物は、弥生時代からの主食です。新旧の主食を一緒に食べるということです。
  一万年続いた縄文時代は豊かな自然の産物を背景に営まれ、けして原始的な文明でなかった事が、最近の発掘調査で分かってきました。栗は食料、強固な建築材として縄文時代を支えた重要な植物だったのです。
(ま)


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