↑prev next↓

帰  郷   山



誰でも心に残っている風景がある。

故郷の山は、会津を象徴する磐梯山でも、飯豊連峰でもない。
小さな盆地の北西をある、末広がりの三角の山。
500mたらずの里山だが、盆地の広がりを手を広げて差し示している。
この山の見える風景こそ、僕の故郷のそのもの。


幼い記憶の断片、
トボトボ帰る小学生の帰路。
この盆地の北西、末広がり山の方向へ歩くと、
暖かいコタツが待っていた。

五月の連休の頃、父親の後から登る。
この山の頂上近くには植林した松や杉の林があった。
雪で倒れた若木を立てる、毎年の春仕事。
帰りは、コゴミ、ゼンマイ、ワラビをカゴに摘んで帰った。


名前は蝉峠、いわれは忘れてしまったが。
北に飯豊の山々、その下に阿賀川が流れ、
その西にこの三角が見える。

久しぶりに帰って来た野沢、
その山の裾野に僕の育った村がある。
2013.8.19 Mamoru Muto


↑prev next↓