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山吹の 立ちよそひたる 山清水
   汲みに行かめど 道の知らなく
   万葉集 高市皇子 たけちのみこ

花咲きて 実は成らずとも 長き日
        思ほゆるかも 山吹の花
         万葉集

かわづ鳴く 甘南備河かむなびがわに かげ見えて
   今か咲くらむ 山吹の花
      万葉集 厚見 王 あつみのおおきみ

春雨の 露のやどりを 吹く風に
   こぼれてにほふ 山吹の花 
      金槐和歌集 源実朝

山吹や  葉に花に葉に  花に葉に     炭太祇たんたいぎ

ほろほろと  山吹散るか  滝の音     松尾芭蕉

(参照 兼明親王の八重山吹の歌)
七重八重 花は咲けども 山吹の
 実のひとつだに なきぞかなしき
 後拾遺和歌集 兼明親王 かねあきらしんのう
    







花  言  葉

「金運」「気品」「崇高」
「待ちかねる」









やまぶき       Kerria japonica DC       〔ばら科〕
 山間の谷川沿いの湿った所に多く、またひろく人家に栽培される落葉低木。幹は直立して束生し、高さ2mぐらいになる。枝は細くジグザグに折れ曲って緑色、葉は互生して2列に展囲し卵形、長い鋭尖頭、基部は切形または浅い心臓形、長さ6~7cm、ふちには切れ込み状の重きょ歯がある。葉質はうすく、表面は鮮緑色、支脈は凹む。裏面では支脈が隆起して、脈上にはうすい毛がある。葉柄は5~10mm。基部に細長いうすい膜質の托葉があるが、早く落ちる。晩春から初夏にかけて、短かい新側枝の先端に1個の花を開く。がくは深く5裂し、裂片は卵形、凸頭、がく筒は短かく広い。花弁も5、黄色、広楕円形、基部は花爪となる。花は径4cmぐらいで散りやすい。果実は、もともと5個であるが、4~1個が成熟し、花托上に永存性のがくにかこまれて生じ、小形のやや左右から押しつぶされたような半楕円形の核果で、背画に稜がある。はじめは緑色であるが乾くと暗色。
 〔日本名〕山吹、これは山振(ヤマフキ)という意味で、枝が弱々しく風のまにまに吹かれてゆれやすいからである。 〔漢名〕棣棠、大田道潅の歌の逸話に出てくる山吹は、このヤエヤマブキで果実が出来ない。
-牧野植物図鑑-








  今回は、古くから和歌に詠まれてきた、春を代表する花山吹です。僕は特別な印象があまりなかったので、掲載が遅れました。 古くは「山振り」風に揺れる姿からそう呼ばれ、山吹になったそうです。
  兼明親王のヤマブキの歌との因縁で有名な太田道灌は、足軽戦法の生みの親、騎馬による一対一戦いから、集団戦法が主流へと変わってゆくことになります。彼は風流を愛するバサラ大名だったのです。また、炭太祇という江戸中期の俳人、句も面白いし、個性的な詩人のようですね、調べて見る価値があるかも知れません。
(ま)ももももももも




八重ヤマブキ



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