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  大君の、任きのまにまに、取り持ちて、仕ふる国の、年の内の、事かたね持ち、玉桙たまほこの道に出で立ち、岩根いわね踏み、山越え、野行き、都辺みやこへに参ゐし我が背を、あらたまの年行き返り、月重ね、見ぬ日さまねみ、恋ふるそら、安くしあらねば、霍公鳥ほととぎす、来鳴く五月のあやめぐさ、蓬よもぎかづらき、酒みづき、遊びなぐれど、射水川いみづかは、雪消はふりて、行く水の、いや増しにのみ、鶴たづが鳴く、奈呉江なごえの菅すげの、ねもころに思ひ結ぼれ、嘆きつつ、我あが待つ君が、事終り帰り罷まかりて、夏の野の、さ百合の花の花笑みに、にふぶに笑みて逢はしたる、今日を始めて鏡なす、かくし常つね見む、面おも変りせず                大伴家持
 
意味: 天皇の命令通りにお仕えしているこの国の一年の政(まつりごと)の結果を報告書にして、岩を踏み・・・山を越え・・・野を行き・・・、都へ上って行ったあなたに、年が変わり月日が過ぎても会えないので、恋しくて落ち着きませんでした。だから、ほととぎすが来て鳴く五月の菖蒲草(あやめぐさ)や蓬(よもぎ)を縵(かずら)にして、酒宴をして心を慰めようとしたけれど、射水川(いみづかは)の雪解け水が流れて行くように恋しさは増すばかりです。鶴が鳴く奈呉江(なごえ)の菅(すげ)の根のように、絡みつくように憂うつで、溜息を吐きながらあなたの帰りを待ちわびていました。そのあなたがやっと仕事を終えて都から帰って来られ、夏の野の百合の花が咲くようにほほえんで私と逢って下さいました。これからは、鏡を見るようにいつもこうして変わることなく微笑んであなたと会っていたいと思います。
  久米朝臣廣縄(ひろのり)が、天平二十年(748)に都に越中の国の年次報告をしに行きました。報告も終わって、翌年の天平感宝元年(749)の5月27日に無事帰ってきたことを祝って、大伴家持が酒宴をし、この歌を詠んだということです。
 
 
 
 
 
 
 よ も ぎ(もちぐざ)           〔きく科〕
Artemisia vulgaria L. var. indica Maxim. (=A. dubia wall.)
 
 本州、四国、九州の山野に最も普通な多年草。朝鮮、小笠原にも産する。茎は高さ50~100cmで、多数分枝し、地下茎は横になってつる技が出る。葉は互生し、楕円形で羽状に分裂し、裂片は2~4対でさらに欠刻があるかまたはきょ歯があるが上葉では全縁洋紙質で上面緑色、下面は白毛を密生するので白く、やや有翼の葉柄の基部には仮托葉がある。夏がら秋にかけて、茎の項で分枝し、複総状花序状となって、管状花だけからなる淡褐色小形の頭花を多数つける。頭花は幅1.5mm、長さ3.5mm、総包にはまぱらにくものす状の毛がある。ニシキヨモギはこれに似て頭花がやや大形、台湾、支那にも分布する一品である。春に新苗を採り、草餅の材料とする。また葉の下面の毛からモグサを作る。民間薬としての効用は多い。島地に産するものは、太いものがあり、枝が出来るものもある。
 〔日本名〕ヨモギは語源不明。蓬はヨモギではない。〔漢名〕艾。 -牧野植物図鑑-
 
 




 春先いち早くかわいらしい葉っぱを地面に広げていたものが、夏は雑草の王様の様に強くなる。野性の植物はすごい、その生命力はいつも感動する。僕は若い葉を積んで乾燥させたものを、お茶や御風呂で楽しんでいる。死んだ吉沢元治さんはこれを乾燥させ煙草代わりしていたことが思い出される。いい香りがするのです。
 昔の人はこれを燻し、蚊や蠅の殺虫剤として使用した。草餅入れるだけではなく、薬として、殺虫剤としてなくてはならない植物であった。 花は夏咲くのでこのコーナーに入れた。(まもる)

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